「言われたモノは創らない ~動画は一緒に作るモノだから」――。

これが、メディアジャパンの企業ポリシーだ。
その心は、と問われれば、クライアントの期待を「気持ち良く、裏切る」こと。
だから、メディアジャパンは制作において、事前にクライアントに台本は見せない。

「言われたモノは創らない ~動画は一緒に作るモノだから」

取材/ライター 小野寺茂

代表の宮崎敬士はいう。

「僕らは、演出された世界の中であっても、リアルな部分を追求したい。その人の素直な面とか、自然な雰囲気を伝えたくて撮影しているんです。自然にその人がいつものように語っている様子の映像にしなきゃいけないんです。そのためには、台本を渡したらいけないんです」

例えば、ある瓦メーカー。創立50周年記念ビデオの制作依頼を受けた。オーダーを受けて担当ディレクターは社長を取材し、打ち合わせを重ねた。

撮影開始を前に、クライアントの社長に提出したものは、撮影項目、それとスケジュールだ。

「台本はないんですか?」と社長。

「台本はありません」と宮崎。

すると、社長は「台本がないと、何を話していいかわからない」。

宮崎は言った。

「台本を渡すと、その通りにやらなきゃいけないと思ってしまうから、うまくいかないんです。たどたどしく、不自然になります。なるべく自然体の皆さんを撮影して、編集しますから、大丈夫です。

説得し、最後まで台本を出さなかった。

試写の日――。

「今まで社長たちは他の会社の不自然な動画を見せられているわけでしょう。いかにも台本を読んでいるような、カンペを読んでいるような(笑)。うちは、そういう動画とはまったく違います。自分たちの仕事をしている姿やインタビューなどが活き活きと捉えられている。だから感動する。自分たちの思っていた以上の動画が出来上がってくると、そこには価値があって、僕らはその価値にお金を払っていただきたいんです。」

試写が終わる。

「そういうことだったのか」――。社長の表情は緩んでいた。

「気持ち良く、裏切」られた瞬間だった。

会社紹介のビデオには、どう見ても出演者の目線が不自然で、カンペを読んでいるとしか思えない動画が多い。見るからに、作りが安っぽい。ドキュメンタリーを得意とするメディアジャパンからすれば、なおさらだ。

「ドキュメンタリーを作っている僕らからすると、ああいうのは、最大にカッコ悪いんですよ。台本を見せることによって、みんなで演じちゃう。それは良くないんです。
こういう風に喋ろうとか、撮影される側の方に変なイメージができちゃう。
そうすると、素人が演じようとする(笑)。そもそもカメラが回っていること自体が不自然なことです、不自然の中の自然さって必要じゃないですか。」

こうした確固たるポリシーの背景には、メディアジャパンのスタッフが、「ワールドビジネスサテライト」「報道ステーション」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」など経済・報道ドキュメンタリーを手掛けてきた映像制作プロ集団としてのキャリアが大きく反映している。

宮崎以下、スタッフ全員が制作してきた番組は、「ただ番組を作ってきました」にはとどまらない、一定のレベルの高さがある。そのクオリティーが担保されているというのが、最大の強みだ。

良い作品とはなにか?

「良い作品というと、誰にとって良いものかですよね。
例えば、クライアントにとって良いものが、クライアントのお客さんにとって良いものかどうかは別ですよね。良いと思っているものを、お客さんに押し付けているだけかもしれない。
クライアントのみなさんが伝えたいことは、動画を見る人たちが欲しがっているものか、どうが。僕らが入って、『こう演出することによって、こう伝わりますよ』とか、『こういう演出なら、うまく伝わりますよ』と教えてあげる。そこに、クライアントのみなさんも気付かなかった感動が生まれるんです」

ところで、クライアントの期待が「気持ちよく裏切」られるまでには、すでにクライアントとメディアジャパンの関係は、“共犯者„と化している。”共犯者„の真の目的は、出来上がった映像を見る多くのたちに感動を与えることだ。ここに、「動画は一緒に作るモノだから」という、もう1つのポリシーが成立する。

「われわれ演出する人と、動画に出る人の気持ちが一体となって、見る人を騙す。共犯関係ですね。そうなると、作品作りとしては、一緒につくりましょうということになる。
そうなると、ヤラセという言葉は一切出てこない。ヤラセという言葉が出てくるのは、撮影する相手側とのコミュニケーションが出来ていないからです。何を伝えたいのかという思いが撮る側と撮られる側とで共有できていないから、齟齬が生じるんです」

メディアジャパンでは、映像に関してこれまでに「ヤラセ」というクレームが出たケースは1件もないという。クライアントとの“共犯関係„を大事にしている証拠だろう。

要するに、メディアジャパンが提案しているのは、こういうことだ。

お客さんに映像を見てもらい、感動してもらいましょう。そのために、僕たちと出演するクライアント、撮る側と撮られる側が一緒に“共犯関係„になりましょう。”共犯関係„になって、「感動」という“完全犯罪„を成し遂げましょう――。

メディアジャパンは撮影技術だけでなく、映像の作り手側の「面白い」という感覚も大切にする。

「動画って見るもんだからつまんないものだったら、見ないでしょ。経営者のインタビューなんで、基本、つまんないからファン以外は見ない。(笑)つまり、見る人が面白いと思ってくれたら、次のステップに進めるじゃないですか。」

彼らが言う「面白い」というのは、ただ笑えるというのとは違う。英語で言えば、ラーフ(laugh)ではなく、インタレスティング(interesting)。興味をかき立てる、という感覚に近い。見る人の好奇心をかき立てて、興味を引き寄せ、会社の事業に共感をもってもらうことだ。

 以上は、ほんの一握りの事例にすぎない。18年の映像制作・納品は2000本以上だ。

数々のクライアントの期待を「気持ちよく裏切」り続けてきた映像制作会社・メディアジャパン。

メディアジャパンの映像制作の特徴がわかる事例を2つ、紹介しよう。

まずは、ある整水器メーカー。

今までの商品ビデオでは、整水器のことを伝えるために、アナウンサーのような女性が出てきて、カメラに向かって整水器の説明をするだけだった。ディレクターの若林は、整水器が納品されているリストを元に取材した。

取材を進めるうち、整水器が幼稚園のプールに入っていることを知った。さっそく幼稚園に行ってみると、プールで幼稚園児がゴーグルを付けずに元気に泳いでいた。

「つまり、水がきれいだという証明ですよね。説明しなくても、見たら伝わる。そういうものなんです。幼稚園児がゴーグルを付けずに元気に泳いでいる動画は、最高のプレゼンテーションになる。メーカーの人たちは誰一人、それに気づかない」

担当したのはプロデューサーの若林。

「動画というのは、見てわかるものじゃないといけないと思うんです。動画の中であらためて説明はいらない。
ニュース番組で、動画が流れた後で、キャスターがフリップで説明していますよね。つまり、説明するものと、動画は別なんです。見てわかるものを作るのが仕事なんです」

あくまでも、こだわるのは「見てわかるもの」。見てわかる現場を撮影して、お客さんの声を映像に入れると、「自分たちのやっていることはこういうことだったのか」と再発見される。そこに、感動が生まれる。

「毎回、この繰り返しですよ。言われた通りのものは作らないで、僕らのプロとしてのテクニックを使って、何を撮り、どう伝えるか。ここに徹するっていうのがすごく重要なんです。そして、気持ち良く裏切ってあげる。映像屋は現場で取材しているってことです。だから、僕らは映像屋であって、動画屋じゃないんです。」

 演出は、取材することで生まれる。取材する中で、発見をしていく。初めは取材する側でも気がつかないこともある。むしろ、現場に行ってカメラを回しながら、気づくことの方が多いという。

動画制作にかける意気込みについて、宮崎はこう話す。

「僕が良く使う言葉に、『事実と真実は違う』というのがあります。きっと僕は真実に近づく作業をしているんだと思うんです。事実を積み上げることによって、メッセージをどう伝えるか、それが僕らの仕事なわけです。しょせん、真実は伝わりません。事実を積み上げても、真実にはならないのは毎回の悩み。それでも、僕らは事実を積み上げていくしかない。それが、僕らの映像制作です。真実は、動画を見た人が確かめてくれればそれでいいんです。」